日本の陶器と海外の洋食器の違い
食器というと世界中に溢れるほどの種類が存在し、製法はもちろんのこと、使用用途に合わせた色や形、柄に至るまで数え切れないほど多種多様なデザインが生み出されています。中でも食文化の違いが影響することによって必要とされる使いやすい形が変わってきたり、視覚的にも食事を楽しむために色やデザインの異なりとして食器の違いが出てきます。
特に日本における和食文化は海外の洋食文化とは大きく違う点が多くあります。
例えば、日本食の代表といえば白米とお味噌汁などの汁物、そして漬け物などの副菜が挙げられます。この点だけ見てもあまり馴染みのない白米と汁物専用の食器は海外にはあまり必要とされておらず、ごはん茶碗やお味噌汁のお椀などは見かけられません。また、日本食の食べ方として特徴的で洋食と真逆とも言えるものの中に、食器を持ち上げて口まで運ぶという動作があります。
洋食では基本的にはお皿は持ち上げずスプーンやフォークを用いて口まで運びます。一方、日本食ではお椀や小鉢を持ち上げて箸で口まで運ぶという作法が良しとされています。
この大きな違いは食器の製法にも影響を及ぼしており、持ち上げることなく食事をする洋食器は和食器よりも重い作りになっています。しかし、持ち上げる作法を必要とする和食器は材質に粘土を用いた陶器にすることで軽量化が図られています。もちろん陶器は洋食器にもたくさんありますが、粘土と陶石を用いた陶磁器であることが多いです。
日本の陶器と海外の統一感のある洋食器
海外の洋食器の特徴の一つとして、統一感のある複数の食器で構成されていることが多いというのが挙げられます。これは欧米人の文化、感性なのでしょう。大皿、小皿など複数の食器を揃える際には、大きさの違いは致し方ありませんが、その他の点、例えば形や色、デザインなどには全て統一感を持たせるようにすることが普通です。またデザインについても、シンメトリックな図形を用いるなどすることが多いです。西洋の庭で、幾何学的な図形や直線で区切られているものを見たことのある人も多いでしょうが、欧米人はこのように幾何学的に揃っている、整っている、調和が取れていることに美しさや価値を見出す傾向にあるようです。
翻って日本の食器である陶器では、もちろんこのような意識が皆無というわけではないでしょうが、あまり重要視されません。複数の種類の陶器を揃える場合に、それぞれのデザインや形はできるだけ合わせたものに、という意識を持つ人はあまりいないでしょう。むしろ一つ一つの陶器のデザインや形の違いをそれぞれ楽しむというように、異質なものをうまく組み合わせることで全体として心の安らぎを感じることができるというのが日本人の感性と言えるかもしれません。
たたら作りで成型して陶器を作る陶芸技法
陶芸技法の一つたたら作りはろくろ成型では作成できない方形や楕円の皿、鉢などの陶器を作る際に行われます。
たたら板と呼ばれる同じ厚さと長さを持った木の板を複数枚準備して、たたら板を同じ数で2組に分けて陶土の両側に水平に積み上げ、両側に取っ手を付けたワイヤーで陶土をたたら板に沿って薄くスライスして行きます。
切り終えた高さのたたら板は両側から外してスライスされた陶土を丁寧にはがし、次のたたら板に沿って再び陶土をスライスする作業を繰り返して行き、複数枚の同じ大きさの陶土を作成する技法です。スライスした陶土は丁寧にはがして型の上に載せてはみ出した部分を切り取ったり、用意した外型を当ててそれに沿って剣先で切るなどして形を整えて行きます。
型に合わせて砂を詰めた袋で形を丁寧に整えてから、剣先を使用しながら微調整しながら望む形に成型します。
水で湿らせたなめし皮で表面を滑らかにして行き、型に付けたままの状態で少し時間をおいて生乾きにさせたのち裏返して型から外して、ふちなどをきれいに整えて仕上げて行くことで陶器としての成型が完了します。
たたら作りは切り分けた陶土をのべ棒でのばして板状にして様々な形に曲げたり、いくつかのパーツに分けたものをくっつけたり組み合わせたりしながら思いのままの形で陶器を作ることも可能です。